2005年、まるで人間のような堂々とした立ち姿を見せる「風太くん」がテレビで紹介されるや、その愛らしい風貌から日本中で大ブームを巻き起こしたレッサーパンダ。
今でこそ熱はだいぶ落ち着いているといえますが、一時は不動の人気者であったジャイアントパンダをもしのぐ人気者となりました。
レッサーパンダにしてみれば、まさに「ジャイアントキリング(大物食い・番狂わせ)」といったところでしょう。
でも、どちらも「パンダ」の名前がついた、この「ジャイアントパンダ」と「レッサーパンダ」、「ジャイアント」は分かるとしても、「レッサー」ってなんだろうかと思ったことはありませんか?
「レッサー」とは、「より小さい」を意味しています。
もちろん「ジャイアントパンダ」と比べてということなのですが、実は最初から「レッサーパンダ」と呼ばれていたわけではありません。
それには「ジャイアントパンダ」が関係してくるのですが、このあとどのような経緯から「レッサーパンダ」となったのかについて解説したいと思います。
レッサーパンダの語源
レッサーパンダが世界の人々に認知された歴史は意外と浅く、1825年のことです。
当時、現地調査に入った西洋人が現地の人に「あれはなんだ?」とレッサーパンダのことを訪ねたそうで、それに対して現地の人は「竹を食べるもの」を意味する「ネガリャポンヤ」だと答えました。
そしてこの「ポンヤ」が「パンダ」に変化したといわれ、これ以降「パンダ」と呼ばれるようになりました。
つまり「パンダ」とはレッサーパンダのことだったのです。
それが変わってしまったのが、1869年のジャイアントパンダの発見で、こちらも竹を食べる動物であるとして「パンダ」と呼ばれるようになりました。そして、大きい方は「ジャイアントパンダ」、小さい方は「レッサーパンダ」と名付けられたのです。
「レッサー」には、「より小さい」という意味のほかにもうひとつ「より劣る」といった意味も含まれます。たまたま生態が似ていたばかりに、実にひどい名前を付けられてしまったものですね。
ちなみに中国語の場合も同様で、中国語でパンダのことは「熊猫」と表します。そしてレッサーパンダは「小熊猫」、ジャイアントパンダは「大熊猫」と表します。
ジャイアントパンダのいったいどこにネコ要素があるんだろうと考えていた人もいるでしょう。でも、レッサーパンダの「熊猫」から付いた名前と知れば、少しは納得できるのではないでしょうか。
レッサーパンダってどんな動物?
レッサーパンダはインド北部と中国西部の間、ネパールやブータンなどヒマラヤに近い森林地帯を生息地域としています。レッサーパンダ自体は、古くより現地の人から知られていたようですが、こうした隔離された山奥という環境が、世界への認知を遅らせたのでしょう。
分類としてはスカンクやアライグマ、イタチに近い仲間で、木登りを得意としています。体重は3~6キログラム、体長は50~60センチメートルと、だいたいネコと同じくらいです。
食べ物は「竹を食べるもの」の名にふさわしく竹を食べますが、そのほか果実や小動物、昆虫など、結構なんでも食べます。
そして愛らしい見た目とは裏腹に気性は荒く、人気のきっかけになった二本足の立ち姿も、実は威嚇しているポーズなんです。もちろん周りを見るためということもありますが、立つことでより自分を大きく見せているそうです。
威嚇のはずがむしろ可愛さアップしてるとか、どんだけかわいいんだよって話ですね。
まとめ
あまり知られていませんが、レッサーパンダはジャイアントパンダなどと同様、絶滅危惧種に指定されています。
あの愛らしい姿からは、そうした現状となかなか結びつくことがありませんよね。しかし、動物園などではすでに取引ができなくなってしまったので、世界中で繁殖が試みられるようになったそうです。
そんな中、起こったのが日本の大レッサーパンダブームです。これをきっかけに、繁殖があちこちで進められるようになります。そうして、いまでは世界の飼育数の7割が日本に集中するというレッサーパンダ大国という結果をもたらしました。
野生と飼育とでは事情が違うとは思いますが、こうした努力の積み重ねで少しでも研究が進んで、一日でも早く絶滅危惧種のリストから外れたらいいなと願っています。