「飛ぶ鳥を落とす勢い」という慣用句は皆さんもご存じでしょう。いま勢いのある人や、急に威勢の増した人やモノなどを指して使う言葉です。
とは言っても、
「あいつは飛ぶ鳥を落とす勢いだな」
みたいに、日常会話として使う人は、さすがにほとんどいないだろうと思います。ただ、テレビやラジオなど、特にエンタメ系の情報番組なんかだと「いま、飛ぶ鳥を落とす勢いのアイドルグループ」といった紹介がされるのでなじみがあるでしょう。
でも、それを表す言葉がなぜ「勢いのある人」や「いまきてる人」のような表現ではなく、「飛ぶ鳥を落とす勢い」なのでしょうか。何か不思議な感じがしますよね。
この言葉の意味するところをいうと、
「飛んでいる鳥をも落としてしまうすごい人」
ということなんです。
これだけだと「そのまんまだろ!」という声も聞こえてきそうなので、もう少し深堀りしましょう。
「飛ぶ鳥を落とす勢い」の由来とは?
そもそも「飛ぶ鳥を落とす」というのは、何を意味しているのでしょう。
多くの人はこの言葉から、鳥を鉄砲で捕らえる射撃の名手を想像しているのではありませんか。
確かに飛んでいる鳥を落とす方法としては投石やブーメラン、日本でなら鉄砲と考えるのが自然でしょう。しかも水辺で休んでいる鳥ではなく、飛んでいる鳥を射ち落すわけですから、それこそゴルゴ13並みにすごい力を持った人、という意味と思ってしまいますよね。
しかし、残念ながらこれははずれです。では何をもって飛んでいる鳥を落とすのでしょうか?
その答えは霊力です。ほかに神通力とも言われますね。
修行を積んだどっかのえらい坊さん、あるいは行者さんが「エイ!」と一声かければ、目に見えない力によって飛んでいる鳥がバタバタと落ちてくるみたいなことを言っているのです。ただ、こんなことは本来起こりえません。
つまり、「飛ぶ鳥を落とす勢い」とは「神がかり的な、あり得ないことをやってしまうようなすごい力を持った人」というのが本来の意味で、転じて「勢いのある人・モノ」のことを指す言葉として使われるようになりました。
ほかにもあるこんな言葉
今度は「飛ぶ鳥を落とす勢い」と同じような意味を持つ言葉、類義語をご紹介しましょう。
同じく、勢いのあるすごい人のことを指す言葉で、「破竹の勢い」「泣く子もだまる」というのがあります。
こちらもよく使われるので、なじみのある言葉でしょう。
破竹の勢い
【読み】
はちくのいきおい
【由来】
この言葉はもともと中国『三国志』時代の逸話がもとになっています。
竹は非常に硬い植物として知られていますが、縦にちょっと刃を入れるだけであとはスパンと割れる性質があります。このことから勢いよく物事が進んでいく例えにされ、スポーツなどで勝ち星を重ねていく様子に使われることが多いようです。
泣く子も黙る
【読み】
なくこもだまる
【由来】
こちらの言葉も中国『三国志』時代の逸話をもとにしています。
ある日、張遼(ちょうりょう)という武将が、10万の大軍に囲まれてしまいます。このとき張遼は十分の一以下の兵力でありながら、敵軍を蹴散らし勝利に導いたそうです。これ以降、張遼の武勇は世間に響き渡り、いうことを聞かない子供に「張遼がくるぞ!」というと、ピタリと泣き止んだというところから生まれた言葉です。
よく子供に「お巡りさんがくるぞ!」というのと同じですね。
そのほかにも「向かうところ敵なし」や「昇竜の勢い」「日の出の勢い」なども同じような意味として使われます。
まとめ
普段何気なく使っている言葉も、本当の意味を知らずに使っている言葉は意外と多いですよね。例えばここで紹介した「飛ぶ鳥を落とす勢い」とは逆の意味を持つ、「うだつが上がらない」なんかもそうです。
いや、『うだつ』って何よって話ですよ。
うだつとは梲・卯建・宇立と書かれ、いわゆる防火壁のことです。これは隣り合った家の屋根の上に造られた壁で、結構裕福な家に限られていたそうです。
そしてこの防火壁を造りつけることを「うだつを上げる」と言い、
うだつを上げることができない人 = 甲斐性のない人
となったそうです。
最近はなんでもネットでパパっと調べられるようになりました。言葉の由来、気になりませんか?
辿ってみたら意外なところに行きついて、面白い発見があるかもですよ。
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